省エネ?高効率な光学素子の新原理を実証 量子化された磁気光学効果をトポロジカル絶縁体で観测


トポロジカル絶縁体における量子化された磁気光学効果の概念図
トポロジカル絶縁体に磁性元素(青色の矢印)を添加して、磁石の性质を持たせると、表面の电子のエネルギーに间隔(质量ギャップ)が生じる。その结果、量子异常ホール効果と呼ばれる、磁场をかけなくてもホール抵抗が量子化される现象が现れる。このとき、质量ギャップよりも十分にエネルギーの小さいテラヘルツ光に対するファラデー効果とカー効果は、微细构造定数で规定された回転角を示す。図中に示したのはファラデー効果による偏光の回転。
© 2016 岡田 健
东京大学大学院工学系研究科の冈田健大学院生、高桥阳太郎特任准教授、十仓好纪教授らの共同研究グループは、表面は电気を通す一方、内侧は电気を通さない性质をもつトポロジカル絶縁体に、磁石の性质を持たせて光を当てると、磁気光学効果により偏光が回転し、その回転する角度が量子力学で理论的に予想される普遍的な値を示すことを実証しました。
ファラデー効果やカー効果などの磁気光学効果とは、磁石の性质を持つ物质(磁性体)に光を当てたとき、透过光および反射光の偏光(振动电场の方向)が回転する现象のことを指し、磁性体において広く観测され、光通信素子や光磁気ディスクの原理として利用されています。トポロジカル絶縁体と呼ばれる物质に磁石の性质を与えると、表面の电子のエネルギーに间隔(质量ギャップ)が生じます(図)。このとき、量子异常ホール効果と呼ばれる、磁场の无い状况下で&濒诲辩耻辞;量子化されたホール効果&谤诲辩耻辞;が现れます。この状态のトポロジカル絶縁体の表面に光を照射すると、ファラデー効果とカー効果が発生し、偏光の回転する角度が、量子力学で规定される普遍的な値をとることが理论的に予想されていました。これは&濒诲辩耻辞;量子化された磁気光学効果&谤诲辩耻辞;であり、巨大な偏光の回転効率が磁场の无い状况下でかつエネルギー损失することなく现れることから、その観测が期待されていました。
今回、共同研究グループは、独自に开発したトポロジカル絶縁体の薄膜を使って、従来よりも高い温度(およそ摂氏マイナス270度)で安定な量子异常ホール効果を実现しました。その后、テラヘルツ光と呼ばれる、私たちが目で感じることのできる可视光と比べて、1/500程度のエネルギーの光をトポロジカル絶縁体に当てました。その结果、量子异常ホール効果が十分に発达した低温では、理论的に予测されていた通り、ファラデー回転角とカー回転角のみから定まる値が微细构造定数(~1/137)と呼ばれる物理の基本定数に向かって収束することを発见しました。
今回の測定では、8ナノメートルの薄膜で0.15度の角度だけ偏光が回転する様子を観測しましたが、これは厚さ1 センチメートル当たりで評価すると、200,000度の回転角度に相当します。この値は、従来の偏光回転素子よりも2桁近く大きい値です。このように、量子异常ホール効果を用いると、磁場の無い状況下でかつエネルギーを損失することなく高い偏光の回転効率を実現できることから、今後、テラヘルツ帯における省エネルギーで高効率な光学素子の実現につながると期待されます。
「理论的に予测されていたテラヘルツ光の偏光回転を実験室で観测した时には大変兴奋しました」と高桥特任准教授は话します。「トポロジカル絶縁体は新しい物质として研究が急速に进展しており、これからも新しい量子现象が実现されていくでしょう」と続けます。
なお、岡田大学院生は理化学研究所 創発物性科学研究センター 強相関量子伝導研究チーム 大学院生リサーチ?アソシエイト、高橋陽太郎特任准教授は同センター創発分光学研究ユニット ユニットリーダー、十倉好紀教授は同センターセンター長も務めています。
论文情报
Terahertz spectroscopy on Faraday and Kerr rotations in a quantum anomalous Hall state", Nature Communications Online Edition: 2016/07/20 (Japan time), doi:doi:10.1038/ncomms12245.
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