东大といえば赤门が浮かぶ人は少なくないはず。ですが、そんな大学のシンボルは、耐震性の问题のために2021年から闭门されたまま。一度もくぐらずに卒业する学生もいます。
赤门耐震対策委员を务める藤田香织先生に、歴史的木造建筑の耐震性を専门とするご自身の研究と、构造の面から见た赤门の特徴、そして改修プランについて闻きました。
価値を継承しながら建筑の安全を确保するために
2020年度、施设部が行った赤门耐震诊断の报告书の内容を吟味した结果、いくつかの条件が重なると大事故が生じる可能性があることが判明しました。それを踏まえて大学执行部が决断し、2021年2月12日に赤门は闭ざされます。新たに内部まで详细に调べることとなり、学内に赤门耐震対策委员会が発足しました。木造建筑の保存修理に详しい藤井恵介先生が委员长となり、建筑学専攻から海野聡先生と私、新领域创成科学研究科の清家刚先生と构造设计の佐藤淳先生、それから地震研究所の楠浩一先生、人文社会系研究科の铃木淳先生、埋蔵文化财调査室の堀内秀树先生が委员になり検讨を进めてきました。

赤门は短手方向の揺れに弱い

FUJITA Kaori
工学系研究科教授
特製の本棚に并ぶのは木造建筑の大家?太田邦夫先生から譲り受けた蔵书。「最高の教科书が揃う『太田文库』です。気になることがあったら本棚を探ればヒントに出会えます」(藤田)
赤门は薬医门という様式を採用しています。屋根の中心线と下の构造物の中心线がずれるのが特徴で、短手方向に大きく揺れると学外侧に倒れる恐れがあります。长手方向には袖塀と柱という构造的な要素があり、この方向の揺れにはある程度耐えられます。短手方向は筋交で补强してありますが、力に抵抗する要素が少なく、问题は短手方向です。门の内侧には柱がありますが、外侧にはありません。赤门の外侧にあるスペースを立入禁止にすればもし倒れても人的被害は防げる、と考えることも可能です。でも、门を开けて通行可とするなら、耐震补强をしないと事故につながる可能性が残ります。
委员会では、文化庁とも相谈しながら検讨を进め、复数の改修案を用意しました。倒壊を防ぐ最も効果的な方法は、大屋根の両侧をワイヤーなどで下に引っ张ることですが、かなり目立つし、ワイヤーに人が引っかかる恐れもあります。道路侧に柱をもう一つ建てる方法もありますが、そのために地面を掘ると考古学的な问题が生じるかもしれません。委员会の推奨プランは、最も费用対効果が高い、贯という横材をワイヤーで下に引っ张る方法です。地面を掘って赤门の重さと同等の锤を埋め、地震や强风が起きても浮かないようにする。ワイヤーが见えてしまいますが、黒くて细いので注意しないと気づかないでしょう。実际にどうするかは大学としての判断です。赤门は东大の门ですが、みんなの门でもあり、いろいろな声を闻いて総合的に考える必要があります。もちろん资金の算段も非常に重要です。
2021年から大学施设部と関係分野を専门とする教职员が协力して调査を开始し、2022年度からは文化庁の补助事业としてという専门家集団による调査と构造诊断が実施され、补强案が2023年度末に策定されました。2024年度は补强の基本设计、来年度は実施设计と仮设工事、2026年度から工事が本格的に开始される予定です。长くかかるのは调査を丁寧にしているから。十分な调査をせずに修理を进めると、过去の痕跡が失われ、文化财としての価値を损なう危険性があります。国の补助事业なので各种手続きも必要です。もう一つ见逃せないのは、建筑业界が大変深刻な人手不足に直面している点です。特に、文化财の修理に必要な高度な知识と専门性を持った职人は全国的に不足しています。赤门はそれほど激しく伤んでいるわけではなく、他に紧急度の高いものがあるならそちらが优先されるのは当然かもしれません。
1923年の関东地震で周りが大破しても、赤门は大きくは壊れませんでした。ただ、それから约100年。前回壊れなかったから次も大丈夫とは言えません。関东地震で少し倾いた记録があり、见えない部分で伤みが进んでいる可能性もあります。最低でも土が詰まっていて重い屋根の葺き替えは必要です。瓦をつなぐ役割があるので全ては无理ですが、少し间引くだけでも軽くなり耐震性は増します。
「きれいだな」から「安全なのか?」へ

振り返ると、私の卒论のテーマは日本建筑史でした。书院造ってきれいだなと思って勉强し、古い建筑がどのように成立しているのかに兴味が涌きました。大学院进学时、构造工学の侧面にも兴味があり、坂本功先生の研究室で古い建筑の木质构造を学びました。修论を书き终える直前、阪神?淡路大震灾が起き、现地调査に入ります。それまで単にきれいだなと思って见ていた建筑を、安全なのかと问いかけながら见るようになりました。建筑学の人はみな建筑が大好きで、いいものを作ろうとがんばりますが、いざ灾害が起きると崩れてしまうし、人命を夺う场合もあることに衝撃を受け、地震国の日本で建筑をやるなら耐震性が不可避だと强く思ったんです。それまでは憧れる気持ちで建筑を见ていましたが、ハード面から関わろうと决め、古い建物の耐震研究をテーマにしました。
この20年间続けてきたのは地震観测です。この间、観测机材の性能が上がり、価格は下がりました。昔は现地に行って地震计からデータを読み込みましたが、通信が発达したいまはオンラインで常时见られます。
日本の技术を他国の建筑に
近年は、木造の文化财を持つ他の国からも相谈が来るようになり、日本以外の歴史的建造物も対象にしています。たとえばノルウェーは木造大国で12世纪の木造教会が多くありますが、构造研究は进んでおらず、モニタリングができないかと打诊をいただき、日本でやってきた手法を现地に応用して调べています。ウクライナの西部、古い木造教会が多いカルパチア山脉付近でも调査を进めていましたが、戦争で中断せざるを得ず、いまは同様の建筑が多い隣のポーランドを调べています。
日本には构造性能研究の蓄积があり、古い木造建筑のモニタリング调査は得意分野です。モニタリング自体は谁でもできますが、いかにそれを解釈するかが重要で、日本はその部分が强み。たとえば中国にも古い建物はありますが、纯木造で残るものは少ないです。歴史的木造建筑が多く残り、大正期から耐震测定を続けてきたのが日本です。自然灾害に耐えてきた歴史的建造物の构造に学び、それを今后の建筑に反映するのが私の愿いです。
歴史的建筑物は定期的に修理しないといけませんが、修理に必要な调査の予算はなかなかつきません。まず図面を起こさないといけない文化财では一部调査费も认められますが、地震の観测とか揺れた部分の精査といったことについては、研究者がやりくりしないといけないのが现状です。大学として调査を行って知を积み重ね、社会で広く活用する形を目指し、2年前に基金を立ち上げました。まずは全学的に重要な赤门の调査に着手し、集まったお金で地震计を设置して観测を続けています。赤门に限らず、调査で得た歴史的木造建筑の知见を次世代に引き継いでいきます。


使い道は、各地の歴史的木造建筑の构造性能评価、若手研究者育成、防灾技术の开発や発信など。日本の建筑を未来に伝えるためのご支援を。