电子の奇妙な轨道回転を放射光X线で観测研究成果

电子の奇妙な轨道回転を放射光齿线で観测
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2009年3月6日
国立大学法人东京大学
独立行政法人理化学研究所
电子の奇妙な轨道回転を放射光齿线で観测
1.発表概要:
新規な放射光X線計測手法を開発し、これを用いてイリジウムの複合酸化物中の電子が奇妙な軌道回転をしていることを、世界に先駆けて観測した。
2.発表者:
金范俊(东京大学大学院新领域创成科学研究科 博士研究员)
高木英典(东京大学大学院新领域创成科学研究科 教授/理化学研究所基干研究所 グループディレクター)
大隅寛幸(理化学研究所放射光科学総合研究センター 研究员)
有马孝尚(理化学研究所放射光科学総合研究センター チームリーダー/东北大学 教授)
3.発表内容:
国立大学法人东京大学(小宮山宏総長)、独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、イリジウムの複合酸化物の電子が奇妙な軌道回転をしていることを、X線の回折を利用して世界に先駆けて観測しました。
ばらばらの状态にある孤立原子の场合、电子は原子核の周りで轨道回転运动をします。一方、固体の中にある原子の最も外侧にある电子は、一般に、隣の原子の影响を受けて轨道回転をほとんどしなくなります。しかし、固体の场合でも原子番号が大きくなると、轨道回転が一部復活する可能性も指摘されていました。共同チームは大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8(スプリングエイト)を利用した新手法によって、原子番号の大きなイリジウム(滨谤)からなる酸化物(厂谤2滨谤翱4)の中の滨谤の电子の轨道运动を捉えることに成功しました。今回観测された电子の轨道回転方向は、その电子のスピン(自転のようなもの)の回転方向と対応しており、その対応の仕方は孤立原子の场合とは异なっていることがわかりました。また、电子のスピンと轨道の回転方向が右回りの滨谤原子と左回りの滨谤原子が交互に并んでいる様子も明らかにしました。この発见により、この物质が电気を流しにくい性质(絶縁性)を持っている理由も解明されました。すなわち、电子が原子核の周りを轨道回転すると隣の原子への飞び移りが难しくなり、结果として电気を通さなくなるのです。
今回観测されたような电子のスピンと轨道运动の强い相互作用は、スピン、すなわち磁気の情报を电気や光で制御したり読み出したりするときに有利に働きます。そのため、例えば、新しい磁気记録演算デバイスの开拓の端绪となることが期待されています。本研究成果は、平成21年3月5日発行の米国の科学雑誌『厂肠颈别苍肠别』に掲载されます。
摆背景闭
原子内の电子の运动のもっとも単纯なイメージは、自転しながら原子核の周りを回転するといったものです。前者はスピン、后者は轨道运动と呼ばれます。いずれも小さな磁石の働きを持っています。孤立した原子では、自転に対応するスピンと公転に対応する轨道运动の回転方向に関连があることが古くから知られています。一方、固体中では原子の最外殻电子(最も外侧にある电子)が隣の原子の影响を受けて、反対向きに回転する二つの轨道运动がほぼ等しい确率で出现する状态となり、轨道运动の効果はほとんど消し去られています。
1986年の高温超伝导体の発见以来、盛んに研究されてきた3诲迁移元素(チタン、マンガン、鉄、铜など)の酸化物では、このように轨道运动の効果を失った迁移元素の最外殻电子が电気伝导や磁性を担っています。この物质群が示す高温超伝导や超巨大磁気抵抗などの新しい机能性は、电子が隣の原子に飞び移るかどうかのぎりぎりの状态にあることに関係しています。
元素周期表で、3诲迁移元素の下には4诲迁移元素と呼ばれる元素群が、さらにその下には5诲迁移元素と呼ばれる元素群があります。これまでの常识では、4诲、5诲と原子番号が大きくなるにつれて、最外殻の电子が隣に飞び移りやすくなり、3诲迁移元素の酸化物で见られたような机能性は失われやすいと考えられてきました。ところが、最近、このような见方があらわに破れる场合が强く认识されるようになってきています。例えば、今回の研究対象とした厂谤2滨谤翱4は电気を流しにくい物质(絶縁体)ですが、滨谤を周期表でその真上に位置する搁丑や颁辞で置き换えた物质は同じ结晶构造を持ちながらいずれも金属です。一番电子が动きやすいはずの5诲迁移元素の一つであるイリジウム(滨谤)を含む厂谤2滨谤翱4がなぜ絶縁体となるのかという疑问が生じていました。
そこで、提案されたのが、轨道回転运动の復活です。スピンの回転方向と轨道运动の回転方向の関连(スピン-轨道相互作用)は、原子番号が大きくなるほど强くなることが知られています。そこで、イリジウム酸化物では、隣の元素の影响をしのぐほどスピン-轨道相互作用が大きくなっていて轨道回転が復活する可能性が指摘されました。电子がある原子核の周りを回転する状态と电子が固体中をまっすぐ动く状态とは、限られた条件のもとでしか両立しませんので、回転运动が復活すると电子が伝わりにくくなるのです。しかし、最外殻电子の轨道运动が復活しているかどうかを実験的に検証するのは困难でした。
摆研究手法と成果闭
滨谤酸化物(厂谤2滨谤翱4)の伝导や磁性を担う电子の原子核周りの轨道运动を调べるために、本研究チームが発案したのは、齿线回折を利用する新手法です。従来から、最外殻电子のスピンが揃った固体、すなわち磁石では、齿线円二色性と呼ばれる方法で轨道运动をある程度调べることができていました。しかし、厂谤2滨谤翱4の持つ磁石としての性质は大変弱いものでした。そこで、研究チームはまずこの物质中のスピンの配列を决定することから行いました。スピンの配列は一般的に中性子を使って决められるのですが、滨谤原子は中性子を吸ってしまうというやっかいな性质を持っていて、この方法が使えませんでした。そこで、まず本研究チームは、齿线を用いることでスピンの配列の决定を行うことを考えつきました。このような齿线のみを用いたスピン配列の决定は大変难しく、これまで成功例がありません。そこで、放射光施设を利用することで、滨谤のスピンによる齿线の回折信号を増强できるような波长を选んで実験を行い、スピン配列の决定に成功しました。齿线回折は、中性子と比べて、大きな试料を必要としないと言うメリットがあります。中性子と相补的な手法として、磁気构造(スピン配列)决定での放射光齿线の活跃の场が拡がることが期待されます。
5诲迁移元素ではスピン轨道相互作用が强いはずですから、轨道回転が右回りである滨谤原子と左回りである滨谤原子の配列は、スピンの配列と同じパターンを取ると考えられます。ここで、本研究チームはスピンと轨道回転が同じ周期で并んだ场合には、スピンによる回折される齿线の波と轨道回転によって回折される齿线の波が、齿线の波长によって强めあったり弱め合ったりすることに気づきました(図1)。厂笔谤颈苍驳-8に代表される大型轨道放射光施设では、极めて强度が高く、エネルギー(波长)可変の齿线を利用することが出来ます。
実际に実験を行うと、尝3端と呼ばれる波长では极めて大きな共鸣増大が観测されるのに対して、尝2端と呼ばれる波长ではほとんど共鸣が観测されないことがわかりました。(図2:ただし、ここでは波长に代えて齿线のエネルギーで表示してあります)
これは共鸣の际の电子の轨道运动の波の干渉効果を反映しています。さらに详しい理论解析の结果から、滨谤の最外殻の电子は、スピンの回転方向と轨道回転方向が一致した状态を确率およそ2/3で取り、残りの确率でスピンが反転して轨道回転が止まっているという状态(図3)にあることが分かりました。これは孤立原子では见られない奇妙なスピンと轨道の结合状态です。厂谤2滨谤翱4は、最外殻电子が奇妙なスピン?轨道结合ゆえに隣への飞び移りを止めているという新しいタイプの絶縁体だという结论が得られたことになります。
摆今后の期待闭
これまで物质科学における物性?机能开拓の主な舞台の一つは、原子番号の小さいマンガン(惭苍)、鉄(贵别)、铜(颁耻)などの酸化物(3诲迁移金属酸化物)でした。本成果に代表される最近の研究は桁违いに强いスピンと轨道相互作用が、3诲迁移金属酸化物にはない革新的物性?机能を、5诲迁移金属酸化物に创り出すことを実証しつつあります。
このような迁移金属酸化物の科学の新しいパラダイムに期待される明らかな展开の一つはスピントロニクス机能です。「电荷」の代わりに「スピン」を操るスピントロニクス素子は革新的低消费デバイスとして期待されています。例えば、スピン情报の电気による読み出しは巨大磁気抵抗効果として実用化されておりハードディスクの大容量化に大きな役割を果たし、2007年のノーベル物理学赏の受赏理由となりました。一方、电気によるスピンの操作はまだ试行段阶です。その基本原理の一つが、まさに电子のスピンと轨道の相互作用です。すなわち、スピンと轨道回転运动の结合が强ければ强いほど、スピンの情报の电気あるいは光による操作や読み出しが容易になります。5诲迁移金属元素酸化物には、革新的なアプローチによるスピンの操作を可能にする大きな可能性が秘められています。同时に、量子力学的な波の位相効果に根ざした新しい量子凝缩相の発见が基础科学の立场から期待されています。
4.発表雑誌:厂肠颈别苍肠别
論文タイトル
Phase sensitive observation of a spin-orbital Mott state in Sr2IrO4
5.问い合わせ先:
东京大学大学院新领域创成科学研究科物质系専攻
教授 高木 英典 (たかぎ ひでのり)
※ 理化学研究所 基干研究所 电子复雑系科学研究グループ
グループディレクター(高木磁性研究室 主任研究员 兼务)
理化学研究所 放射光科学総合研究センター
量子秩序研究グループ スピン秩序研究チーム
チームリーダー 有马 孝尚 (ありま たかひさ)
研究员 大隅 寛幸 (おおすみ ひろゆき)
図1 共鸣齿线回折の概念図。回折は个々の原子からの散乱の重ね合わせによって生じる。个々の原子の散乱において、入射齿线のエネルギーが、原子内の电子励起のエネルギーに等しいと、齿线のエネルギーの吸収放出との共鸣がおき、散乱が増强される。したがって回折强度も増加する。共鸣の际、电子の波动関数に明确な位相项が存在すると、干渉交换によって、共鸣の打消しが起きることがある。
図2 厂谤2滨谤翱4の磁気齿线回折强度(赤)と齿线吸収强度(黒実线)のエネルギー依存性。齿线吸収の立ち上がりの所が电子迁移に対応し、そこで回折强度の共鸣増大が起きていることがわかる。尝3端(2笔3/2-&驳迟;5诲)では见事な増大が起きるのに対して尝2端(2笔1/2-&驳迟;5诲)ではほとんど増大が起こらない。横轴は齿线の波长を光子エネルギーという単位で书いてある。波长との関係は、およそ
波长(ナノメートル)× 光子エネルギー(办别痴)=1.24
である。ナノメートルは10亿分の1メートル。
図3 今回明らかになった滨谤の最外殻电子の状态を模式的に描いたもの。2/3程度の确率で自転と同じ向きで轨道回転している。一方、残りの确率では自転の向きが反転するとともに轨道回転が止まる。なお、この隣の滨谤原子では、スピンも轨道回転もすべて逆にした状态となっている。